機関車に関心の無いにもかかわらず薦められたので、「てっちゃん」相手の機関車本かと思いつつ手に取ったが、読み耽ってしまった。
1963年から72年にかけて日本で撮られた機関車の写真を集めたものなのだが、機関車の背後に垣間見える、あるいは機関車を包み込んで広がる風景が、ほのかに60年代の日本の匂いを香りたてていて懐かしい。
この時代の日本は、60年代半ばから盛り上がり70年前後に事実上終息した学生運動、青年労働者運動の盛衰と共に、日本全体の何か終わろうとしていた。ページをめくっていくと、機関車と風景の絶妙な組み合わせが、短く感情を抑えた練達の寸言によるキャプションに支えられて、そんな時代に対する著者のほろ苦い愛惜を、かすかに、しかし間違いなく伝えてくれる。
こんな時代に青春を送った団塊の世代に属する著者による、写真家としての半生を振り返った少し長めの文章が巻末に掲載されていて、この時代を立体的に立ち上げてくれる。
著者のノスタルジーをどのように評価するかは意見の分かれるところであろうが、俳優の香川照之が一文を寄せ、帯にも引用されている言葉のように、写真を匂わせる術(すべ)を知る写真家のひとりであることは間違いない。