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決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫)
 
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決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫) [文庫]

バーバラ・W. タックマン , Barbara Wertheim Tuchman , 町野 武
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

ある暗号電報の解読が、世界史を変えた!第一次世界大戦の勃発から2年半、欧州戦線は膠着し、850万人の死者を出してなお出口の見えない泥沼が続いていた。アメリカが参戦しないかぎり戦局は動かない。しかし当のウィルソン大統領はあくまで中立を貫く。そんなある日、1本の暗号電報を傍受したことから、英海軍諜報部が動き出す。イギリス、ドイツ、アメリカの決断は?メキシコ、日本を巻き込んで、水面下で息詰まる情報戦が繰り広げられ…。名著『八月の砲声』の著者が、膨大な資料を綿密に読み解き、アメリカ参戦の内幕を克明に描き出した傑作歴史ノンフィクション。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

タックマン,バーバラ・W.
1912‐89年。ニューヨークの名門に生まれ、ハーヴァード大学を卒業。政治評論誌「ザ・ネーション」の論説や特集記事を担当し37年には記者としてスペイン内乱を取材、英国評論誌特派員ののち、文筆家として活躍。63年に『八月の砲声』でピュリッツァー賞を受賞、72年『失敗したアメリカの中国政策』で再受賞した

町野 武
1924年福島県生まれ。東京大学経済学部卒業。元朝日新聞東京本社外報部次長、論説委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 330ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2008/7/9)
  • ISBN-10: 4480091564
  • ISBN-13: 978-4480091567
  • 発売日: 2008/7/9
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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9 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 冒頭から核心に切り込む駄文の無い傑作, 2008/8/7
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レビュー対象商品: 決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫) (文庫)
著者のタックマンには、ケネディ大統領が米国の外交政策立案者らの必読書に指定した『八月の砲声』という名著があるが、本作品も前著に勝るとも劣らない傑作である。『八月の砲声』は第一次世界大戦が定説のとおり、当事国が故意に起こしたのではなく、大国の不注意や誤謬、失敗、過信などが開戦を惹起したことを明らかにしたが、ヨーロッパを舞台にした戦争であり、連合国と同盟していた日本にとっては遠い出来事と言う印象であった。ところが、第一次大戦の転換点を記す「決定的瞬間」を読んで、せいぜい日本の動きは三国干渉で取り上げられた失地回復をアジアで図り、あわよくば大陸進出を考えていた程度と考えていたことがいかに誤りであったか痛感した。両世界大戦に大国アメリカのプレゼンスは圧倒的だが、まさか、ここにメキシコ、そして日本が大きく登場しようとは思わなかった。文章も正確かつスピーディーで一気に読了してしまった。巻末に「ツィンマーマン」電の暗号文とドイツ語と英語の復号後の対比表が収録されており、臨場感が一層高められた。今から50年前の作品であることを全く感じさせない。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 歴史は最高の知的エンターテイメント, 2010/1/27
レビュー対象商品: 決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫) (文庫)
まず文句なく面白い。日本人にはなじみの薄い(参戦しているのに!)第一次世界大戦のアメリカ参戦にまつわる事実を丹念に追いながら読者を退屈させず一度読み始めるとやめられない面白い本に仕立て上げるタックマンの筆力に感謝。同じ第一次大戦ものの「八月の砲声」にはちょっと劣るかもしれないことと、日本に関する記述は後知恵でいろいろ知っている日本人には確かにちょっと不満という点で星4つにした。
しかし、逆に言えば、当時の日本が欧米の政治家や知的な人々からこのように見られていた(連合国から離脱してメキシコとともに米国を攻撃する可能性がある)という事実は衝撃的だ。
日本人の多くは第一次大戦の米国参戦と言えば「客船ルシタニア号のUボートによる撃沈」に怒ってという理解ではないか。しかし本書を読めばわかるようにそれほど単純ではない。米国にはドイツ系住民が多くまたドイツの巧妙な世論工作や、元から強い戦争を嫌う世論などから客船一杯程度の撃沈では参戦に踏み切れなかった。しかし、ドイツがメキシコと日本を組み合わせて背後から米国を攻撃する工作を行っていたとすればもはや米国の中立はあり得ない・・・
英国の暗号解読能力の高さ。それも日本のように役人が主導するのではなく、能力のある民間人の能力を最大限活用しながら。この本の主役は間違いなく英国の暗号戦を勝利に導いた海軍のホール提督だ。部下の能力を活用できただけでなく最高の瞬間に最も効果的に解読した情報を利用した。
第一次大戦中の日本といえば、大隈と寺内の内閣だ。後世の我々が良く知っているように日本に米国を攻撃する力などなかったし、そんなことを現実に考えていた有力政治家・軍人はいなかったろう。しかし、おそらくタックマンの情報源は当時の米国の諜報筋なのだろうが、どうも多くの軍人や外交官が不用意な個人的な発言をあちこちで行い、それが情報として米国政府関係者に上げられていたようだ。それが連合国の間に日本への不信感を呼び、結局日本は損をした。その後の日本に対する英国や米国の政策にも悪影響を与えたに違いない。
タックマンはドイツの政治家・軍人は自信過剰で相手の能力の高さを理解しなかったと非難する。日本の政治家・官僚などはそれよりも能力が低いわけだが、もし、日本に能力の高い政治家や外交官が当時いたなら、当時の状況をうまく活用し連合国側に誠意を見せ付けることによりはるかに大きな見返りを得られたのではないか・・・・などと いろいろ考えられるところが歴史の面白さだ。
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5つ星のうち 5.0 知らないことだらけ!読むべし!!読むべし!!!, 2011/9/24
レビュー対象商品: 決定的瞬間―暗号が世界を変えた (ちくま学芸文庫) (文庫)
「哀れなメキシコよ。アメリカにあまりに近く、神からあまりにも遠い」。これはメキシコの大統領だったディアスが残した言葉であり、日本でも反米音頭を垂れ流すアメリカ嫌いのウヨク・サヨクどもによって、頻繁に引用される有名なフレーズである。しかし、本書を読むと、メキシコがなぜ不幸なのか、なぜ中南米が貧しいのかについて、サヨクどもが叫ぶように「諸悪の根源はアメリカにあり」式の単純なモノでは無いように思えてくる。中南米やメキシコの混乱のかなりの部分が、実はドイツによる策謀であったことが本書を読むとよく理解することが出来る。

そもそもドイツがメキシコ革命になぜ介入したのか。それはアメリカの欧州への参戦が怖くて怖くて仕方なかったドイツが、分裂し半ば内乱状態にあるメキシコを更にぐちゃぐちゃにしてアメリカに「欧州の戦争にかまっている暇なんかない。メキシコの安定を回復することが最優先だ」と思わせるためである。その為にはメキシコの内乱がひどくなればなるほど良い。だからドイツはウエルタにもカランサにも、更にはアメリカに侵入しては略奪虐殺を繰り返す盗賊にも資金援助をし、武器を与えたのである。ドイツの策謀はこれだけに留まらない。グアテマラやエルサルバドルにもパナマにもドイツ人を送り込み軍事援助をし、軍事的にもアメリカに対抗しうる一大国家(もちろんそれはドイツの強い影響下にある)ラテン連邦を建設しようとしたというから驚きだ。日本でもメキシコ革命に関する本が多く出版されているようだ。しかし、その多くはサヨクが反米のネタとして著したものであって、「諸悪の根源はアメリカ」とするだけで、こうしたドイツの悪だくみによって中南米の政治的経済的混乱に拍車がかかったという記述はほとんど見当たらないように思える。まあ、私もメキシコ革命の本はほとんど読んでいないのでこれ以上のことは言えないので、この方面の本を読んだ上で、改めて論じてみたい。

本書は、第一次大戦にアメリカが参戦する直接の契機となったツィンメルマン電報事件の一部始終を追ったノンフィクションである。第一次大戦にアメリカが参戦した契機になった事件といえば「ルシタニア号事件(英国の客船ルシタニア号をドイツの潜水艦が無警告で撃沈し、乗客1198名が死亡。うちアメリカ人が128名も含まれていたことから、米国の世論がドイツに対して敵対的になった)」が頭に浮かぶが、本当にアメリカがドイツに宣戦を布告するに至ったのは、このドイツ外務大臣ツィンメルマンが放った暗号電報が解読され世間に公表されてからだったのだ。内容は「アメリカを背後から脅かすべく、メキシコがアメリカに宣戦布告すれば、ドイツはメキシコと同盟を結び最大限の軍事的経済的援助を行う。同時並行で排日移民法案でアメリカとの関係が悪化している日本にもアメリカへの宣戦布告を呼びかけている。日独墨が結託し、太平洋とメキシコ湾から米国に攻め上がり、大戦でドイツが勝利すれば、ドイツの仲裁でメキシコには米墨戦争で失ったテキサス、アリゾナ、ニューメキシコの三州を返還すると約するものだった。

この暗号は英国の諜報機関「ルーム40」によって解読されたのだが、この暗号解読を下手にリークするとドイツに英国の暗号解読の実態が知られてしまうので、英国は情報の出し方に苦労する。このあたりの英国の苦悩と情報の出し方の模索が本書の読みどころのひとつである。

それにしても思うのはドイツという国のジコチュウぶりである。傲慢に思い上がったドイツは「ドイツが世界を支配するのは自明」として、当時の覇権国である米英にダメージを与えることならなんでもやった。ロシアの軍事力をシベリアに振り向けさせるため「黄禍論」を煽り、日本人を含む黄色人種はキリスト教徒白色人種の敵だと煽ったのもドイツなら、英国にダメージを与えるためアイルランドの独立運動も支援し、アメリカにダメージを与えるためメキシコをアメリカに宣戦布告するようけし掛けたのもドイツだ。これだけではない。キューバの独立も支援するし、あろうことか日本の反米感情を利用して日本をもアメリカに宣戦布告させようと工作したのだ。幸いにして、ことのときは日本の指導層はしっかりと国益を認識しており、対米協調をむねとし、ドイツの誘惑を拒絶した。しかし30年後、日本の愚かな指導者層はドイツの誘惑に乗り、日独伊三国同盟を結び、日本を滅亡へと追いやるのである。ドイツの悪いところは、こうした諸外国への介入が、全部ドイツの欧州における覇権確立のためには何でもやるという「立ってるものは親でも使え」的な機会主義的な動機に基づくもので、理想とか、目標とか何もない、冷血な計算にのみ基づき、ドイツの利益になるなら利用できることはなんでもやるという為だけになされているというものだ。これでは介入されたほうはたまったものではない。

この暗号電報が世に公表されたとき、ドイツ政府は当初、ちょうど今の北朝鮮のように、自国に不利な情報は「でっちあげ」だとして全否定する構えをみせる。こうなると、これが真正なものだと知り抜いているアメリカ政府関係者以外は、意見が分裂する。当時も今もアメリカには根強い絶対平和主義勢力というのがあって、ツィンメルマン電報が英国のでっちあげだと主張して戦争参加を拒絶するグループは米国に大勢いた。米国では侵略戦争とは血に飢え、欲ボケした欧州人が行うもので、そんな汚らわしい戦争に米国が巻き込まれる必要はないとする、日本の社民党みたいな連中が結構いるのだ。このことは知っておいた方が良い。ウイルソン大統領が反戦色の強い米国議会及び米国世論を説得するのに如何に苦労したか。このあたりが本書の第二の読みどころだ。

では、最終的にどうしてアメリカはドイツに宣戦布告することになったのか。それは他でもない。電報を打った張本人であるツィンメルマン外務大臣自身が「あの電報は私が打った本物です」とアッサリ公言したからだ。これで米国の世論は一夜にして対ドイツ強硬論一色になる。外交で、これほどまでに自国に不利益になるバカな発言をした外務大臣は他に存在しないという。どうしてツィンメルマンがこんなバカな発言をしたのか、真相は謎のままだが、著者はツィンメルマンの思い上がった傲慢さこそが、この発言をもたらしたのではないかと推測している。「アメリカはどうせドイツに宣戦布告なんかできっこない。出来たとしても動員し、軍隊を欧州に派遣するまでに半年はかかる。それまでにドイツは英国を兵糧攻めにし屈服させ、勝利を勝ち取っている」と信じていたとしか考えられないと著者はいう。

冒頭に、ドイツの暗号電報解読に成功した諜報機関の指揮官ホール提督の言葉が紹介されている。「ドイツ人は確かに優秀だ。ただ彼らはドイツ人は、相手も自分たちと同じように優秀かもしれないと想像できないほど自惚れているという致命的な欠陥を持っている」とコメントしている。
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