著者は日本を代表する独立系ベンチャーキャピタリスト。
96年に独立して11年、彼が運用するファンドのIRRは年平均110%を超えるという。
しかし、その高いパフォーマンスはあくまで結果としての数字であり、彼の特筆すべきは、
・自らが出資者を開拓してリスクマネーを調達してファンドを組成し、
・投資先となるベンチャー企業経営者を自らの投資判断で見極めて投資を実行し、
・ベンチャー企業の様々な経営課題の解決に経営者とともに現場で取り組むことによって
目標の実現を目指すことにある。
この3つのプロセスを彼自身が現場で実践してきたからこそ、
ファンドへの出資者、ベンチャー企業経営者、そしてベンチャーキャピタリストの
WinWinの関係を築き上げることができたのである。
まさに、自らの判断と責任で行動するプロフェッショナルなベンチャーキャピタリストであり、
組織に帰属するサラリーマンとしてのキャピタリストやコンサルタントとは根本的に違う。
本書は、彼がベンチャービジネスと関わる日々の現場で積み上げてきた実践をベースに、
早稲田大学の大学院の博士課程で研鑽を深めてまとめ上げた博士論文がもとになっている。
この論文は日本ベンチャー学会の清成忠男賞の第1回受章という輝かしき栄誉も受けたが、
本書は決して難解な学術書ではなく、また実務と遊離した机上の理論書でもない。
彼自身がベンチャービジネスの現場で流してきた“汗”と“知恵”の結晶である。
さらに、彼が実践してきたことに基づくことだけでなく、
日本を代表するキャピタリスト5名の取り組みが「ケーススタディ」として紹介されている。
キャピタリストはともすれば結果としての投資パフォーマンスに注目されがちだが、
それを実現する過程の葛藤やそれをどう乗り越えてきたかをしっかり学びたい。
本書はサクセスストーリーやノウハウ本の類ではなく、
読者自らが考えることを求められる骨太の実務書である。
しっかり読み込んで自分のものにすれば確実に実践できるであろう。
プロフェッショナルを目指すベンチャーキャピタリストやコンサルタントにとって必読だが、
高い志を持って夢の実現を目指すベンチャー企業経営者にもぜひ読んでいただきたい本である。