この本は、読む人を選ぶ本だ。
ただ、この著者の作品を選ぶ人は、その時点でこの作品に選ばれているような感がある。
日蝕や一月物語と比べること自体ナンセンスだと思うが、現代社会の闇を様々な思想や哲学を
張り巡らせて描こうとしている著者の筆力に脱帽させられる。
内容、文体ともに万人受けするとは言い難いが、ここまで凄惨な展開を最後の最後まで貫徹
されると、読後、一種の清涼感すら抱かずにはいられない。
著書で描かれる殺人事件の被害者・加害者の言動を通して、メディア・警察が認識する被害者・加害者を
実際の被害者・加害者と認識すること自体、滑稽なことであることを辛辣に描いており、
結局、誰が悪魔で、誰が決壊したのか、その判断は読者に委ねられている感がある。
ただ、本を読むことを単純に楽しみたい、と思う人にはあまりにも重いが、
思索を巡らせて本書を読み進めていけば読後の充実感は十分にあると思う。
ある意味良著だと思うが、読者を選ぶ点で☆4が妥当かと。