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決壊〈上〉 (新潮文庫)
 
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決壊〈上〉 (新潮文庫) [文庫]

平野 啓一郎
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

平野 啓一郎
1975(昭和50)年、愛知県生れ。京都大学法学部卒。’99(平成11)年、大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 480ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/5/28)
  • ISBN-10: 4101290415
  • ISBN-13: 978-4101290416
  • 発売日: 2011/5/28
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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心の闇 2011/6/23
By Kaonio
これまでに読んだ平野さんの小説の中でこの作品が一番震えた。深く病んだ今の世界に生きる人々の『心の闇』と『離脱者』が解き放つ『狂気の発露と伝播』を克明に描ききり、日常生活の中に潜む『何か』への恐怖をあぶり出す傑作だと思います。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 執拗ないじめの報復を少年に約束し、彼の閉じた心を開き、殺人を行うことの快楽を説いたのは、文字通り「悪魔」を名乗る男の囁きだった。この悪魔は正体不明だが、多弁かつ知的、口にしたことは必ず実現させてしまう。冷酷さとおぞましさはもちろん彼のキャラクターの属性のひとつだけど、どこか現実の閉塞感に風穴を空けるダークヒーロー的でもある。ブルガーコフ「巨匠とマルガリータ」の悪魔が、衆人環視のステージで魔術のように人間の首を切り落とし客席を唖然とさせるように、平成日本という「決壊」の作品世界を、一転、大規模な怪奇ショーの舞台に転化させてしまうのも、この悪魔の存在ゆえ。負の祝祭を取り仕切る祭司=悪魔による残酷劇の活劇感は、読者をおそらくは確実に無力な放心状態に追い込むが、一方で全体として深刻なテーマの作品に、小気味よいリズムを与えているのも確かだ。すさまじい破壊行為は疾走感に満ちた、一大スペクタクルの様相を呈するが、さすがは厳密な計算家の著者のこと、それが荒唐無稽に陥る心配はない。平野作品を、難解な思想小説であると思い込んでいるひとには、こういうパンクな一面を意外に感じるんじゃないか。小説作りにおけるバランス感覚のよさに敬服する。
このレビューは参考になりましたか?
8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「絶望のうちにあって死ぬ。諸君はいまでも、この言葉の意味を
理解することができるであろうか。それは決してたんに死ぬこと
ではない。それは生れでたことを後悔しつつ恥辱と憎悪と恐怖の
うちに死ぬことである、というべきではなかろうか。」

初めて、上記のサルトルの遺した言葉に出会ったのは、
大江健三郎の『万延元年のフットボール』だった。

『決壊』を読んでいる間、幾度となくこの言葉が、
頭の中を反響し、衝突し、沈殿していった。

ドストエフスキーと大江健三郎の影響を強く感じた。
センセーショナルな事件やミステリー仕立ての構成、
そしてときに饒舌な文体は、物語を読み進めるのを強く後押しする。
緻密な心理描写は、登場人物の造形に好き嫌いはあれど、
説得力をもってこの小説を形作っている。

また、ここで語られているテーマは極めて現代的な問題を孕んでいる一方で、
根源的にはクラシカルな問いに帰着している。
幸福とは何か、人はなぜ生きているのかと。

主人公、崇が迎える結末は、暗く絶望的だ。
どうしようもないどん詰まりに落ち込み、自分の人生を反芻しながら、
弟、良介のことも反芻する。その心のひだは言葉には言い尽くせない。
彼は決壊する。そうなることが自明であるかのように。

「言葉がお前自身と完全に一致するように責任を持て。」
悪魔が唱える言葉は、皮肉にも、良介を奮い立たせる一方で、
崇を完全に打ちのめす。
作者本人にとっても、読者にとっても、決壊しかねない厳しい台詞だ。

万人にお薦めできる作品ではないが、一度でも自己の存在に
問いを立てたことがあるのなら、読むべきだろう。
現代小説として、非常に重要な作品だと感じた。
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