池田智子さんの情緒あふれる創作人形の世界にどっぷり浸れる、素敵な素敵な作品集。
時の重なりが醸し出す風貌、にじみでる人柄・・・池田智子さんの創られるお人形は、体つき、脚の組み方、指先、着ている服のしわひとつまで一体一体がほんとうに表情豊かで、今にも動き出しそう。いつまで眺めていても飽きません。
「道程」「ニューオーリンズの風」「来し方」「椰子の木陰」「おけいこ帰り」「よい旅を」「村一番の早みみ」「雨あがり」など、月日の重みを感じさせる作品群から、何気ない日常の光景、四季おりおりに豊かな表情を見せる子供たちの情景、外国の村や田舎で見かけそうな一場面、など、その世界はまさに『時の風景』。
バゲットを抱えて愛犬と家路に向かう初老のご婦人を描いた「日課」、あちら岸に渡ろうとするカモの親子と、そのシーンをそっと見つめる女の子を描いた「お引っ越し」など、各作品のタイトルも素敵で、見るものの想像力を膨らませ、どんどん引き込まれてしまいます。
ちょっとした頬のたるみ、笑いじわ、職人らしい気骨顔、かすかに憂愁を感じさせる背中、幸せを感じさせる二重あご。孫とおばあさんが絡めた手から感じられるあたたかみ。いったいどうやってこんな豊かな表情を布一枚から紡ぎ出せるんだろう、と驚嘆しながら眺めているうち、いつのまにかこちらの表情がゆるんでいる、本を閉じたあともしばらく胸に抱えてその余韻に浸っていたい、そんな気持ちにさせてくれるすばらしい作品集です。