池澤夏樹は自分のことはあまり語らない。
ミクロネシア、ギリシャ、ハワイイ、
沖縄、そしてフランスと旅をしながら
あるいは住居を変えながら
そこを舞台にした物語やエッセイや
評論を書いているけれど
そこで感じたことを書いているだけ。
自分のことではない。
それがこの「池澤夏樹の旅地図」では
過去への思い、なぜ旅に出て、住居を変え、
それが自分にどんな影響を与えたのかを語っている。
さらには幼少時代を過ごした帯広のこと。
「幸せな幼少時代だと迂闊にも
勘違いしていた子供だった」と表現するのが池澤夏樹らしい。
「いるべきでない場所にいる」という矛盾を
抱えた彼は、特に日本との折り合いが悪いという。
その彼が日本を離れたときに
書くべきことをみつけ、小説を書き始めた、
という始まりに興味を覚える。
これまで多くの著作を愛してきたこちらとしては
よくぞ日本を飛び出てくれた、という思いがする。
その土地で感じること、
それを言葉にすることの連なりが感じられ、
ファンとしては嬉しい一冊。
また池澤夏樹が選ぶ「旅本」「旅シネマ」
「旅音楽」はチェックしたくなる項目。
『読書癖』にも大いに影響を受けたのを懐かしく思い出す。