平凡社のコロナブックスシリーズの「東京のうまいもの」「京都・大阪のうまいもの」や、この本にも登場する近藤氏が池波氏の正太郎の小説にでてくる料理を再現する「剣客商売包丁ごよみ」をはじめ、池波正太郎の小説やエッセイに登場する食べ物を題材として企画された本を結構読んできたが、この本はダメ。
とにかく文章を書いている、過去に池波氏の書生だったという佐藤隆介という人物がダメだ。
自分の趣味(食べ物)のことを本にしたいが、自分の名前では売れないし出版もできないので、“故”池波正太郎の名を無断で借りたんじゃないかというくらい、著者は自分の趣味(他人からみれば嫌味な)の世界をひけらかしているから性質が悪い。
彼の雑文製造処「鉢山亭」主人という妙に気取った肩書きも鼻につくし、自分を下に置いたようにしながら上から目線で書く文章も鼻につく。いも、かぼちゃ、くりが嫌い。挽肉は好きだけどハンバーグは嫌いといって、つくられた料理を口にすらしない。しかも料理人に失礼なことをしているとは露ほどにも思っていない。何様のつもりだ、とつっこみのひとつでも入れたくなる。
書生(この時代がかった言い方も気取りが感じられて好きになれないが)をやめた経過を著者は、ある事情としか書いていないが、実は愛想をつかされただけではないのかと勘ぐりたくなってしまう。
池波正太郎という名前が書かれていなければ手に取ることもなかった一冊だと思うが、名前に惹かれて買っただけに、腹のたち具合もかなりのものだった。
自分の趣味を書くのであれば、池波正太郎をダシにすべきではない。