一枚あるいは一連の絵画、彫刻、建物、着物などの視覚対象物を凝視しそこに表現されたものを読み解き・読み尽くすということのおもしろさ・楽しさが味わえる。
江戸の視覚世界を著者は「るつぼ」と読み解き、その甚だしい混合・ないまぜと矛盾・対立の中に豊饒性を見出している。江戸ではそういう状態を「めでたい」といい、「尽くしもの」様式が生み出されたと説く。「百蝶図」「百福図」「江戸名所図屏風」「猫飼好五十三疋」「石橋図」など、まさに尽くしの一極と感じる。
図像の読み解きは、各見開き2ページの中に凝縮し、あふれ、万華鏡のようだ。だが、そこには膨大な図像渉猟・凝視と該博な知識・情報が潜んでいると思った。文字面だけのこの解説ページのレイアウトにも趣向があって楽しい。
江戸の視覚世界を基軸としながら、著者の目は世界に及ぶ。中国(北宋の都、蘇州)、ポルトガル、オランダ、イタリア、韓国の中に、「近世」の「るつぼ」状態を見出している。すべてが混沌一体となっている。「江戸百夢」という標題なのになぜ、世界がという疑問は「EARLY MODERNの図像学」として半ばまでが雑誌連載だったということで理解できた。