怪奇な蜥蜴の刺青をもつ女賊・黒蜥蜴が、秘宝「エジプトの星」をめぐって、名探偵・明智小五郎と対決する『黒蜥蜴』。まるで豹と人間とを足し合わせたような外見の殺人鬼・恩田親子を、明智小五郎が迎え撃つ『人間豹』、硫酸による殺人事件を描いた本格推理中編『石榴』。『黒い虹』は他の推理作家たちとのリレー小説で、乱歩はその1回目を担当している。
これらの作品のなかでも、とりわけ『黒蜥蜴』は1961(昭和36)年に三島由紀夫によって戯曲化されて以来、幾たびか上演され、また映画化もされた人気作品である。美しい女怪盗と名探偵とのあいだで繰り広げられる壮絶な智慧比べ。敵同士でありながらお互いに引かれあっているふたりの心理的ジレンマに、読者は「ドラマ性」を感じ取っているのだろう。また、黒蜥蜴が登場するのは全作品中この短編だけだが、明智小五郎や怪人二十面相、小林少年らと並んで、乱歩作品の人気キャラクターである理由もそこにあるのだろう。彼女を演じた俳優の美輪明宏の当たり役ともなった。
人気舞台の原作あり、ホラー小説あり、本格推理ものありと、乱歩の作風の幅広さを感じさせる1巻となっている。(文月 達)
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乱歩の作品は実は短編の方が面白い。こうした隠れた名作を発見できるのも、この全集が出たおかげだ。
「石榴」を未読の方は是非。
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