江戸川乱歩は日本の本格探偵小説の第一人者であり、昭和初期より活躍してきた。戦後は探偵小説専門誌が創刊され、ここから育った海野十三や横溝正史、山田風太郎といった実力者も乱歩を信奉した。乱歩はまた西洋の探偵小説に傾倒していたことでも知られ、『三角館の恐怖』の想を得た米国の探偵小説『エンジェル家の殺人』のロジャー・スカーレットやヴァン・タイン、エラリー・クイーンといった作家陣の影響を色濃く受けている。
そして21世紀に入って甦る乱歩作品の数々は、今なお色褪せない輝きを放ち、現代の読者は推理小説の巨人が遺した至宝に改めて感嘆することになるだろう。心理描写の妙や鮮烈なトリック、痛快な解決劇、そして舞台設定のディテール描写にいたるまで、乱歩の魅力があふれる。これら4作品が、1948(昭和23)から50(昭和25)年という敗戦の傷がまだまだ癒えない時期に創作された事実を思う時、乱歩という稀有の語り手のもつあまりにも豊潤な才能と精神性に頭が下がる。(田島 薫)
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