悪文や、論旨の乱れが散見されます。著者は出版にあたり、
十分な推敲をされたのでしょうか。
たとえば、「伏見城の天下普請では、東北大名は古くから
の日本海ルートで、資材・食料・労働力を直営で、たとえ
ば秋田から敦賀に輸送し、帰り荷には豊臣家の蔵米を積ん
で津軽から南部小浜で販売したりした」なる37頁の文章が
その典型です。
悪文であることに加え、普請のための資材輸送の記述に
絞った記述がなされていないために、論旨がすっとあたま
のなかに入ってきません。「南部小浜」とはどこなのだろ
う、小浜の南部なのだろうか、という疑問も生じます。
また、39頁にある、日本海沿岸の廻船が買積船だったとい
うトピックについては、論旨の展開が理解できません。
「(買積船の)主な船荷は鱶鰭・干鮑・煎海鼠などの俵物
三品と呼ばれた海産物や、秋田の阿仁鉱山の金・銀・銅な
どの鉱産物だった。これらは明(後の清)で非常に珍重さ
れた」とあるのですが、日本海沿岸の廻船が中国までそれ
らの産品を運んだというように読めてしまいます。
さらに、この記述に続いて、「鱶鰭や煎海鼠などは高級
中国料理の食材として現在でも欠かせない。なお、東京湾
内の横浜市沿岸も輸出用海鼠の大産地であった。近年の中
国経済の発展の影で、東北・北海道沿岸地域での海鼠の密
漁が急増している事実もある」との説明がなされます。
横浜が海鼠の産地であったことや、現代における海鼠の密
猟の話を、日本海沿岸の廻船とどうつなげるべきなのでしょ
う。
この本が絶版になった理由がわかるような気がします。
なお、著者には文章の書き方の訓練とともに、パラグラフ
の概念の勉強をおすすめします。よく理解されていないよ
うにおもわれます。