こういう本が文庫で手に入るとは嬉しいかぎりです。年中行事、遊女の生活など吉原の風俗がことこまかに描かれております。なかには心中の仕損じ、相対死、おろし(堕胎)、私刑、折檻といった悲惨なものもありますが、墨の、細い描線で描かれた絵図の美しさのため、どこか夢幻の世界の話でも聞いているような気になってしまいます。ここにあるのは江戸の文化としての吉原でありまして、歌舞伎に昇華される美の原型、現実そのものではありません。われわれにとっては、江戸文化のお勉強としての吉原でしょうか。文章のですます調は、悲惨を語っても、どこか優雅。真夏に手足をしばり、押し入れへ入れて、蚊に食わせる蚊責めなんぞもございましたそうで。へい。