前半は、江戸時代の民衆の旅行スタイルを道、馬、駕籠、通貨、手形、火打ち袋、衣服、旅籠、筆記具などのインフラ及び生活用具の各論に分けて紹介。マッチのない時代、火打石が使われていたことは知っていたが、実際にどうやって火を熾したのかが何となく分かり、利口になったような気分。江戸期に大流行した伊勢参りのことも詳しく調べてあって、面白く読めた。
後半は、江戸日本橋から京都三条大橋までの約490キロをつなげていた東海道53カ所の宿場を東から西へ順に案内。こちらも楽しい読み物で、しかも、全部で200頁強の小ぶりの文庫ながら、著者ご本人の所有だという「東海道名所図会」など10種類の、当時の旅行案内等の「絵」多数が載っていて、いい味を出している(絵が小さいので、虫めがねで確かめながらだったが)。力みのない淡々とした筆致と、挿絵群の面白さが相まった効果への評価に拠って、ここは一気に☆五つ。絵がカラーであればなお良かったが、ま、贅沢は言うまい、ということで。