杉浦日向子さんの本の中でも一番好きな本で、手元においていつも眺めています。
前置きなしですが、いつの間にやらタイムマシンが開発されていて、杉浦さんはさっそく江戸時代に行ける免許をとって毎週のよにタイムスリップ…という設定。
でも、カメラやレコーダー、現代のものの持ち込みはいっさい禁止。というわけで、街をへめぐり、好きな光景をしっかり目に焼き付けて、自宅でスケッチを起こすという設定になっています。本書に収められたイラストは、全部そんな実地で見た景色の写し、なのです。
…というのは、もちろん架空の設定。だけれど、杉浦さんは架空という気持ちでやっていなかったのではないかと思います。今日はどこを描こうか。あそこの景色はよかった。あの人々は面白かった。あそこのせんべいはうまかった。そうだあれを描こう、なんてやってるとき、杉浦さんの魂は実際に現代を抜け出し、江戸の町を歩いていたのだと思います。絵はけっして本格な画家のように上手ではないですが、何気ない日常が中心に描かれ、見ているとその濃厚な“空気感”にこちらまで魂がさまよいだして江戸に飛んでいってしまうようです。