前半は浅草で開催された7メートル近くあった籠細工の関羽の見世物について考察。この見世物は当時のニュースとなり、50万人近くの人々が見物に訪れたという。さらにその関羽の意匠が歌舞伎や浮世絵などに反映され、社会的に共通認識化していく。そしてこの見世物はその後各地を巡回し、まさに「旅するメディア」となる過程をつぶさに見せてくれる。さらに著者は、この「旅するメディア」というキーワードから、長崎に渡来したゾウ、ラクダ、ヒョウなどの動物の見世物、幕末維新に渡米までしている軽業なども紹介している。前者の動物の見世物はご利益のある見世物として、これまた浮世絵をはじめ引き札や薬などのさまざまなグッズを生み出すようになる。
江戸末期から明治まで流行した「生き人形」の見世物。女性の肌をいかに本物のように見せるかの工夫について書くと同時に、お色気路線に走りながらも、見世物小屋の場所が浅草観音境内という場所柄ゆえの「信心と遊楽」の境について考察している。江戸時代の娯楽の一端を垣間見せながらも、今日のメディアとイベントの関係についても考えさせられる書である。(鏑木隆一郎)
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また、これも最近読んだ「安政大地震」では、とても見世物どころではなかったように思われるのだが、この本を読むと、軽業の見世物が大好評なのだ。しかも、天才軽業師は、明治維新を待たずして渡米し、興行を打って、アメリカで客死している。
何もかも知らないことばかり。
先行研究に頼らず、一から資料を調べ直しており、信頼が置ける本である。
しかもこの本は、それを何とでも言える架空の議論で言っているのではなく、あくまで一次資料に基づいて書いているところが、何よりも信頼できます。そう言うと、むずかしい研究書のように思うかもしれませんが、そうではなくて、非常にわかりやすく軽快に書いていて話自体が抜群に面白いです。
江戸文化史としてもためになり、実にさまざまな知識が得られるし、既に別の評者の方が書いているように、現代のイベント論や娯楽論としても参考になります。さまざまな読み方ができる素晴らしい本で、とにかくお奨めできます。
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