本書をひと言でまとめると、「現代の常識は江戸の非常識」だろう。
『落語の国からのぞいてみれば』(講談社現代新書)と同様、講談社の雑誌「本」に「落語の向こうのニッポン」の著者の連載が元になったものだが、本作の方が議論のウェイトが高い。堀井ちゃんの持ち芸である一人ボケ突っ込みは滑り気味である。前作同様、やはり相当量の文献に当たっているが、文献ガイドや落語解説は前作の方にある。
ホリイちゃんは、政治経済など真面目な領域には基本的に手を出さないスタンス("
馬鹿が止まらない"というエッセイ集があるくらい)で、さんまやタモリの類である。あえて言えば「どうでもいいこと」を”ずんずん”調査する中で、時に学者からも滅多に聞けない本質を突いたことを言う。だから「主張に論理的な飛躍がある」うんぬんと言うのは不毛である。エンタメから本質が突き出ることに意味がある。
◆p.21 近代医学はある一部に対してしか有効でしかない。南軍を徹底的に打ちのめした優秀な将軍だからといって、大統領として有効な能力を持っているわけでないのと同じことだ。…「病いと戦う」ということはそれは早い話が「死と戦う」ということになってしまう。(第一章より「病は引き受ける」)
◆p.47 キツネタヌキに騙されていたころは、…人は「意識で制御できる主体的存在」である以前に、「自然の影響をもろに受けるきわめて受動的な生物」であるとおもっていた…・・・自然も越えた「ある何か」が見えるかどうかが大事だったのだ。キツネに騙されていたころは、いろんなことが自然と会話できたはずだ(第三章より「キツネに騙される能力の喪失」)
◆p.201 お取り寄せの多くは、その土地に関する体験も経験もないまま、情報によって、取り寄せて消費するという、そういう脳内先行社会によって支えられている。インターネットで知り合った異性と、いきなり深い関係になるのと変わらない。(第十二章より「人が動かないから成り立つ」)