いちおう〈文庫オリジナル〉と銘打ってありますが、実際には、新潮文庫既刊のエッセイ集『味と映画の歳時記』『フランス映画旅行』『旅は青空』『ドンレミイの雨』と重複した文章がおさめられているので、池波正太郎の愛読者は要注意です。
そうはいっても、《仕掛人藤枝梅安》シリーズとともに、著者の絶筆となった『居酒屋B・O・F はじめてのフランス(一)』の初の文庫化なので、お見逃しなく。これは、新潮社のPR誌「波」に掲載されたことのある遺稿。かつて同誌に連載された現代小説『原っぱ』の続篇ですが、連載第一回の途中でプツンと終わる。
そのほか、全集版でしか読むことができなかった対談と鼎談が3本、第二部〈江戸の味、東京の粋〉という見出しにまとめて、文庫に初収録されている。これまた、熱心な池波ファンにとっては一読に価する滋味深い内容。
池波正太郎没後20年。歳月のたつのは、じつに早いものだなあ。池波先生は、昭和を代表する小説家のひとりとして、これからも大衆に支持されて読み継がれていくだろう。