前著『江戸の坂−東京・歴史散歩ガイド』が大幅にパワーアップされて、江戸・東京の坂道探索に必携の本となって蘇った。
本書の特色は次の2点である。第一に、坂道探索のコースが歩きやすいルートにまとめられていること。第二に、そのルートが、江戸切絵図(嘉永年間=1850年代はじめ)に丁寧にマッピングされ、現代図と対照されていること。後者の考証にはずいぶん時間が掛かったと思われるが、おかげで坂道探索と江戸の風情探索が同時に楽しめることになった。
本書でカバーされている地域は、江戸城の周辺を中心にした江戸の一部である。是非、残りの地域も本にして頂きたい。本書で「50名坂」をリストアップしているが、残りも取材して、「100名坂」にしてもらいたいものだ。また要望として、区域図だけでは江戸全体の中での位置が分かり難いので、標高入りの全体図を載せてほしい。中沢新一『アースダイバー』によれば、江戸の坂は聖なる台地(神社仏閣・武家屋敷)と俗なる低地(町屋・遊郭・街道)を結ぶ回路である。標高を意識することで、坂道探索が一層味わい深いものになるに違いない。