新進戯曲家の小説デビュー作とのことで、期待して読んだ。
確かに、思わず次を読みたくなるプロットの面白さはある。
「〜のような」が多用された強引な比喩も、書き割り的ではあるけれどマンガのような平らで輪郭のやたらはっきりしたビジュアルを生み出すのには役立っている。
ただ、それがこれでもかこれでもかと畳み掛けられると、面白さよりも押しつけがましさに息苦しくなってくる。
3作の中では、『暗狩』に一番興味を覚えた。
楳図かずおと昭和初期の探偵小説が混じったような、劇画調のおどろおどろしさがそこここに見られる。
暗闇の中で主人公が自分の心の闇と向き合うあたりはいいことが書いてある。15行くらいだけど、そこはなかなかの名文。
しかし、冒頭から物語を追ってここにようやく辿り着くと、「ああ、この作家はこれが言いたくてこの小説を書いたんだなぁ...」、ということがあまりにもあからさまに見えてしまうのが難点。しかも小学生である主人公に心の奥の闇を語らせるのにはやや無理があり、結局はこの主人公の少年が作家の代弁者=作家自身に収束してしまうのが残念だった。
いつまでも小説の世界の中にとどまっていたいような、その小説の時間に何度でも戻って行きたいような、深く香しい小説がある。本谷氏の小説は、それとは正反対に、とっとと読んで、なるべく早くその世界から逃れたいような小説。私は前者のような小説が好きなのでちょっと辛かったが、単純にストーリーの面白さを求めるなら、十分に読み応えがあるし、若い書き手の荒削りの息づかいも魅力といえば魅力だ。
小説の方はもういいかな...とついつい思ってしまうが、本業の演劇の方は機会があれば一度くらいは見てみたい。