推理小説以外でチェスタトンの本を読んだのは初めてなのですが、こりゃすごいですね。 宗教、哲学、社会学、文学、歴史、科学、ありとあらゆるテーマの中から自在に事例を引き出し、それらを自分の視点とミックス、時には峻別し、今日的な問題を(と、言っても20世紀前半のイギリスの)情け容赦なく一刀両断です。
抽象的な文章と具体的な文章と、言葉遊びと皮肉とユーモアと、ミクロの視点から一気にマクロの視点へと変幻自在、まったく独自の文章世界を創り出す−。 まさに天馬空を行くという感じで、私なんか何とかその空を行く姿を見失わない程度に追っていくのがやっとです。 それぞれのエッセイについて、テーマは理解できるし、現代日本にもまったく当てはまる一文も必ず見出せるのですが、本当に正直な感想を言えば−もう少しわかり易く書いてくれないかなあ。 ホントに言葉数が多すぎて、圧倒されてこっちは何も言えなくなっちゃうよ−という感じです。 人ごとながら、翻訳者の方はさぞ大変だったろうと思います。
ある意味、自由自在に自分の頭脳を働かせられるエッセイよりも、読者に内容を分からせなくてはならない、足かせ付きの推理小説の方が読み継がれる、という宿命を背負った作家だったのかもしれません。 とは言え、ホントにはっと胸を打たれる一文がたくさんの本ですから、読んでみてください。