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言葉を吐く主体は、何かが乗り移ったと後になって思う。 …「俺は写植屋だから、作家の先生方のことはよく知らない。知らないけれど、作家というのは多かれ少なかれ、何かに憑かれてものを書くんじゃないんですか」 中島らもの哲学の表明をみることが出来る作品だと思います
この本では、らもさんのなかに住む3つの人格が強く各登場人物に投影されている気がしました。寡黙で思索的な写植屋、情報を重んじる知性の編集者、そして非現実な世界を懸命に構築しようとする詐欺師というように、各人物の性格が作者の中に同居している代表的な人格のように思えました。これまで読んだ作者の小説は、どれか一つの人格に光を当てて、“話し”を構築していく傾向があるように思いますが、この小説ではそれぞれの人格がそれぞれに目立つような構成になっています。たぶんそのようにバランスをとった結果として、読後の感想がライトで爽やかな恋愛小説になったんだと思います。
私はこの作者の本を多く読んでいるほうですが、この本を一番よく読んでいます。特に、睡眠薬を飲んだ後の写植屋の紡ぎ出す言葉の羅列が、圧倒的です。酒等を摂取してから、この小説のこのくだりを読める人にお勧めします。
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