映画「道元」は、大衆受けを狙い、フィクションの女性を登場させたりして、
全編の清冽なイメージを損なう面があったが、原著の「永平の風_道元の生涯」は
映画の印象とはあきらかに異なる。
「永平広録」、「従容録」ほかについての学術的な解説書を多く手掛けた
碩学の著者が、道元に関するあらゆる資料、文献を精査した上に、
並みの小説家の及ばない構想力、表現力を駆使して綴られた道元伝である。
およそ禅に志し、道元の道を歩もうとしている人たちにとって、
僧俗を問わず必読の書である。
とくに、中国の禅堂での席次につき、日本での法歴を無視し、最末席を付与
されたことに抗議して、皇帝への直訴状まで認め、最澄、空海、栄西らが、
已む無しとした妥協を峻絶したことの叙述は、一面、道元禅の真髄を提示している。