私自身、ロックのないフォールディングナイフという代物には痛く警戒心を抱いておりまして、かれこれ十数年、日本の刃物文化を愛しつつも肥後守に全く手を出さなかったのは偏に安全性に不安があったからなのです。が、この度、出刃式の切り出し刃物を新調するにあたりまして、当品以外にブレード形状で満足の行く品が無く止む無しに購入したという余り誉めらたものではない事情があります。
が、購入してみてかれこれ四ヶ月ほどになりますが、その驚くまでの使い勝手の良さに度肝を抜かされました。確かにロックが無いという点は一つの大きな不安要素ではあるのですが、個人的に心配していた抜刀時のがたつきやぐらつきというものが四ヶ月の使用を経ても全く無いのです(使い方や仕様についての詳細は私がアップデートしました写真の方をご覧下さい)。
これまで和鋼としては白紙二号を使用した事があるものの、当品に使われている所謂「本鋼」といわれる所の青紙鋼材は初です。しかし、本研ぎを入れてみてその余りの研ぎやすさには驚嘆致しました。決して柔らかいわけでもなく脆いわけでもなくひたすらに研ぎやすい、そんな感触のある鋼材です。これで白紙と青紙の双方を扱った事になるのですが、和鋼は確かに砥石を使っての研ぎをお薦めしますね。癖になります。
唯、その余りの錆びやすさにも度肝を抜かされたのは厳然たる事実です。具体的には自然乾燥させる為に放置しておいたら、経験上の「これくらいは大丈夫だろう」という程度の小さな水滴の中にカビのような錆が三十分もせぬうちに付着していたのは流石に目を疑いました。この錆はもう一度、研ぎを入れるか磨き粉で擦ってやらないと取れません。
よって、メンテナンスには以下の点に気をつけて下さい。
1.フォールディングナイフの場合は絶対にブレード以外の部分を水に浸けない事。
シースに水が残ると納刀時、その水に接触してしまい其処からあっという間に錆びます。青紙鋼材を用いたフォールディングナイフの場合(当品が当て嵌まります)、シースにはそもそも水を入れてはいけません。研いだ際に出る鉄粉は流水に付けて落とすのではなく、出来れば面倒でもその都度、布で拭き取って下さい。
2.メンテナンス後はキチンとブレードから完全に水分を除去する事。
ステン材と比べて勿論の事、同じ和鋼とですら白紙に比べ圧倒的に防錆能力が落ちますので、例えばブレードに汚れが付いた場合も極力、水洗いはせず、濡れ布巾等で拭くようにして下さい。研ぎの後でブレード全体が濡れている場合も直ちに厳重な水分除去をお薦めします。例えば私の場合、大きな水滴を日本手拭いのようなヌバックの無い布巾(破れて着れなくなったTシャツでも可)で大方の水分を拭き取った後、カラカラに乾いたカチカチの雑巾等でブレードの方を撫で付けてやるといった手法で完全に水分を除去してます。仕上げに天日で熱を持つくらいに乾かしてやると完璧です。
後、割込鋼材といえども意外や意外、仕上砥でも研ぎ跡が目立ってしまう繊細な鋼材なので、傷や曇りがあるのは我慢ならないという方にはやや奨める事に及び腰となる品でもあります。#1500の仕上げでも私の腕では曇りが出ておりますので、#6000くらいの極上仕上げでもしてやらないと鏡面仕立てにはならないでしょう。この極上仕上げ用砥石は安い品でも良いものは単体で六千円くらいしますから注意して下さい(砥石は番号が少ないほど粒子密度が荒くなります)。
※Amazon様に登録されている砥石。私が使用しているものではありませんが参考までに。
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SUEHIRO キッチン両面砥石 #3000/#1000 研ぎ水受け台付 SKG-34 #1000と#3000のコンビネーション。これくらい砥石に幅がないとやはり綺麗に研ぎづらいです。#1000なら和鋼で中砥に、ステン材では仕上げに使用して構わないでしょう。#3000は仕上砥でもかなり目が細かいです。普通は#2000行かないですね。通常は#1500くらいが仕上げの下限目安と見て下さい。
台が付属しない
SUEHIRO キッチン両面砥石 #3000/#1000 SKG-24もあります。こちらを用いる場合は折りたたんだ濡れ雑巾の上に置いて安定を持たせると研ぎやすいでしょう。
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KING 刃物超仕上用砥石 台付 #6000 最終超仕上用 S-3 極上仕上げ用ですね。一般的には全く必要が無いレベルの粒子密度を持った砥石で#6000。ほぼ鏡面仕立て専用です。
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亀印 王将 料理用包丁砥石 台付 中研用 S-800P 意外と無いのですね、#800の砥石。
中仕上げ用の中砥です。ステン材だと中仕上はもっと荒い#600でも良いのですが、和鋼だと削れすぎますので#800以上にした方が安心でしょう。#1000番だと割合、時間がかかるので研ぎに自信をある程度、持たれた方は刃付けの角度を少し気にしなければならない#800で研いでみるのも良いと思います。
見た感じ、やや幅が狭いかという印象がありますので、もう一つ上のサイズの
KING 高級刃物用砥石 標準型 #800 中仕上用 DX-800も良いかも知れません。価格と財布に応じてお選び下さい。
他に、研ぎやすく更に切れ味が良いという日本の誇りともいって良い青紙鋼材ですが、鈍るのもやや早い様子ですね。この点、やはり切り出し刃物なので先端を使う事が多くなる以上、部分的な研ぎをしすぎるとブレードの形状そのものが変わってしまう点に注意して下さい。
最後です。確かに留めや造り自体はかなり簡易的なので荒い使用は絶対に出来ませんが(特に留めはリベットを潰しただけの簡単な造りです)、精密な小手先の作業にはもってこいですね。上記の通りブレード自体がかなり良品なので、値段を鑑みると自作でシースを作成してオリジナルのカスタム・シースを作成する手もあります。なんといってもこの性能でこのお値段ははっきり申しまして安い! お薦めです。