無名の主婦であった三浦綾子を一躍流行作家にした作品としてあまりにも有名な本作。
なんども映画化・ドラマ化されているため、かえってじっくりとこの小説に向き合うことが
できないできたが、今回読んでみて改めて三浦綾子の作家としての大きさを実感させられた。
時代が移り変わり、通信手段や科学技術がどんなに発達しようとも
人間ひとりひとりの心に潜むエゴイズムや嫉妬・憎しみ、欲望は不変のままである。
最近の作家の作品には、そういった人間の業に対しさしたる疑問を持つことなく、
むしろ開き直ってそれらを正当化した作品が目立つように思う。
それに対し、この「氷点」は荒削りな部分も少々あるとはいえ、
人間の弱さや醜さを見つめ、それを克服しようとする清冽な真摯さに溢れている。
また舞台となっている旭川の美しい自然描写もこの作品の大きな魅力のひとつとなっている。
世代を超えて読み継がれる、普遍的な優れた作品だ。