この作品はルーブル美術館出版部のプロジェクトの一環で出版されたものです。
名のある漫画家にルーブル美術館をテーマに一冊の漫画を描いてもらおう、という企画です。
日本からは「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦が参加しています。
ストーリーや表現方法もすべて作家に一任された中で、
ニコラ・ド・クレシーは実に面白いアプローチで古典美術に迫りました。
かなり遠い未来のこと、氷河期が地球上に訪れて人々はこれまでの文明の大半を氷の中に失ってしまいます。
どれくらい文明が失われたかというと、人が絵を描く、という行為そのものを忘れてしまったほどなのです。
そんな世界の中で歴史学者たちは失われた文明の遺跡があると信じ、遺跡探索に出かけます。
そして氷に埋まったルーブル美術館を発見し、取り残された収蔵品を見て、勝手に面白い解釈をして失われた文明人の文化を推察するという・・・
美術史の素養がある人ならば、「おいおい」と突っ込みたくなる絵画解釈ばかりで笑えます。
ルーブル美術館を紹介する漫画として、とてもユニークで斬新な切り口であると感心します。
絵を描くという行為そのものに不慣れな人が、古典絵画の裸婦を見たとき、どう思うか?
ちょっと考えただけでも楽しいですね。
絵画鑑賞という、一見お高く止まってとっつきにくいようなテーマでも、
その裏側(まったく知識のない人間が初めて絵画を見たときにどう思うのか)からスポットを当てて見てみるという、
ニコラ・ド・クレシーならではの大胆でユニークな発想に感心させられます。
非常に卓越した画力が備わり、漫画表現そのものも非常に繊細で美しいものですが、
ストーリーの構成にも独自のセンスや知性が光ります。
漫画家として、生きた稀有の才能であると思います。