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だが、本書では、維新前後はもちろんのこと、維新後から日清戦争までの彼の慧眼ぶりが、みごとに記されている。日清戦争で死んだ清側の戦艦隊長はかつて勝が指導した人物だったという下りなどは、いかに彼が博識で広い活動を行っていたかということが分かると同時に、彼の人間としての苦悩が伝わり胸がいたくなる。
世界のどこかで戦争が起こり、かついろいろな意味で日本がとるべき態度を決定することが待たれる今こそ、勝海舟の世界に向けたまっさらな眼とその心意気に触れるべきではないだろうか。
勝が吉本に語ったものを元に、しかし歪曲された史実は考証し直し描かれているので、安心できて読みやすい物になっている。
「おれの意見は日本は朝鮮の独立保護のために戦つたのだから土地は寸尺も取るべからず」として、その代り償金をたくさんとってそのカネで支那に鉄道を敷設して、支那に交通の便を図ってやる、というのである。床屋政談の気味がなくもなく、ご隠居の放言といってしまえばそれまでだが、発想の自在さといい、バランス感覚といい稀有の人といわざるを得ない。
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