雨乞いの儀式の最中、衆人環視の密室状況の湖で、
儀式を執り行っていた〈神男〉が何者かに殺害される。
その後も、儀式を主宰する神社の宮司たちが次々と殺され……。
衆人環視の密室状況下での殺人という不可能犯罪の真相はシンプルかつ明快。なぜ、
わざわざ儀式の際に殺すのかという問いにも、必然性のある答えが用意されています。
また、事件後にある人物が思わず漏らした「まさか××まで、水魑様の生贄に……」
という台詞にトリプル・ミーニングを仕掛けることで、真相の伏線を張ると同時に、儀式
の異形性を浮き彫りにしているのも秀逸です。
言耶は、事件全体を推理する際、犯人の条件を七つ上げ、それをもとに消去法で犯人を
特定しようとしますが、後から事実誤認が判明したり、データの追加があったりするので、
いつも通り、事件の構図は二転三転とめまぐるしく変っていきます。
その上、編集者の祖父江偲が視点人物となった章で彼女が遭遇する怪異には、結末に
至っても合理的解決がなされず、謎が投げ出されたままの状態で物語の幕が閉じます。
本作の登場人物のなかには
『厭魅の如き憑くもの』に登場した一族の血縁者と思しき人物
がいるので、もしかすると“神と神との相剋”というホラーの文脈で、本作のカタストロフィは
読み解けるのかもしれません。