巻頭に家族親族や著者の幼少期からの写真が添えられていて、一見いかにも事実を綴った自伝風。
だが、「生後六ヵ月になっても頭髪が一本も生えなかった」と記されたわずか十数ページ前に
(生後五ヵ月頃の美里)のキャプションのある赤ん坊の写真。
その子はむしろ普通より髪が濃く、そのためにふさふさと立っているので、首を捻った。
ご丁寧にさらに数ページ先でも「二歳をすぎても私の頭には猿のような産毛が生えているだけ」と書いてある。
この冒頭の記述と写真のギャップで、この作品のスタンスの曖昧さを見てしまった。
実際の写真を添えるなら、自伝として嘘偽りのない真実だけを述べるべきだろうし、
自伝風物語とするなら、嘘と矛盾する写真など添えなければいいのだ。
いかにも真実のように語りながら、各所で自分に都合のよい嘘や誇張を織り交ぜているのだなと思うと、全編を本気では読めなくなった。
しかし、編集者も著者も、文庫化の時点になってもこんな重大な矛盾に気づかないとは、
ずいぶん杜撰なチェックしかしていないのですね。