これらを一気に解決する手段として、著者が提案するのが水素燃料である。水素は地球温暖化を抑制できるうえ、化石燃料のように偏在せず、発電施設が簡便であることから、インターネットのように分散型かつ双方向的なエネルギー源になりうる。エネルギーの民主化が進めば、地政学に基づく中央集約型の国家ではなく、地球本来の生態系の営みを反映するコミュニティが実現するというのが著者のヴィジョンだ。
科学的知識をアナロジーに利用する点や、あまりに理想主義的なヴィジョンはともかく、豊富なデータに基づく文明批評は説得力があり、面白い。最も興味深いのはやはり化石燃料に依存する危機についてだろう。「水素エコノミーはもう手の届くところまできている。それがどれだけ早く実現するかは、私たちがどこまで本気で石油などの化石燃料からの脱却を図るかにかかっている」。著者の言うとおり、化石燃料からの脱却は人類の急務。現代社会が直面する最大の危機とその解決策を明快に示す野心作だ。(齋藤聡海)
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最も参考になったカスタマーレビュー
14 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
新しいエネルギーシステムの展望,
By Udom Rod (Vancouver, BC, Canada) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (単行本)
本書では、現代の化石燃料を基盤とした文明は今後長くは続かないという主張のもと、水素をエネルギー媒体とする新しいエネルギーシステムを展望している。水素エコノミーの議論に入る前に、化石燃料を基盤とする現在のシステムについて全体の約三分の二を割き、非常に丁寧に解説している。ここから得られる結論は、化石燃料の有限性、燃焼による温室効果ガスの排出による地球温暖化問題によって、今後現状のシステムは他のエネルギーシステムに移行してゆく必要があるということだ。イスラムの文化が今後の石油を基盤とするシステムに与える影響については1つの章を割いて解説しているが、非常に興味深く読むことができた。 最後の2章で水素を媒体とした分散型エネルギーシステムを展望している。インタネット上の情報との比喩を使い、水素の共有財産的側面を強調するなど示唆に富む議論だ。安心の概念と水素エネルギーシステムの議論も独創的で興味深い。 水素エコノミーが実現したときの議論は豊富だが、重要な問題が議論されていないように見える。著者は、最初は化石燃料、究極的には再生可能エネルギーから水素を製造することを前提としているようだ。しかし、本書中でも記述があるように、風力や太陽光などの再生可能エネルギーから現在化石燃料から得ている量のエネルギーを得るのは容易でないはずだ。再生可能エネルギーのポテンシャルに関してもっと詳細な議論が欲しいところである。さらに、著者は水素が将来的に技術革新と規模の経済によって安価に製造できることを前提にしているが、もっと根拠が欲しい。 また、中央分権的な現在のエネルギーシステムより分散型のシステムが多くの点で優れているという議論を展開しているが、集中型システムの利点や分散型のシステムの弱点もあるはずで、これらのシステムを評価する枠組みの提示があればよかった。 著者も、水素エコノミーへの移行は簡単ではないと示唆しているが、どのような障害がありどのように克服すべきの明確な記述があれば本書で詳細に記述されている水素エコノミーの展望ももっと説得力を増すだろう。
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
エネルギーを融通しあう社会,
By アマゾン大好き "amazondaisuki.com" (神奈川県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代 (単行本)
昔はマキが各家にあって貴重なエネルギー源でした。将来は昔のようにエネルギーをみんなが持っていてそれを融通しあうという話がなるほどでした。
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