今まで知っていたことが違う風景に見える、このドラスティックな自分の中の変化が読書の醍醐味だ。
海で泳ぐとき、プールとは違う音が聞こえる。パチパチとかピチピチとかの表現の音が聞こえるんだが、これって、底の岩が転がっている音かと思っていた。この本でその正体が分かった。底生動物のテッポウエビの出す音だった。多分、この音は小学校のときから知っていたし、何だろうと思っていた。その疑問がやっと晴れた瞬間だった。
この本を読んで、そうだったのか、そうか自分はこんなことも知らなかったのか、と膝を打つことが多かった。例えば、空中の音はホバークラフトなどの大音量であっても海中にはほとんど届かないこと、水中は空中ほど見通しが良くないため、水生動物にとって音が重要な知覚要素であること。また、魚ではその物理的性質によって内耳と側線と2つの感覚器が発達したこと。浮き袋も音響共鳴や腸に繋がって音の発生に関わっていること、音の伝搬には海底の地形、特に浅瀬が重要な振る舞いをすること、などである。
本書は読みやすいが、論理の展開が分かりやすくはない。それでも、海に生きる生物たちに興味があり、そしてあまり知られていない音の世界に少しでも興味があれば、海の見方が変わることだろう。今まで知っていたことが違う風景に見える、このドラスティックな自分の中の変化が読書の醍醐味なのだから。