水滸伝はいわずと知れた三国志と並ぶ中国の伝記物語ですが、
長編で描いた三国志とは対照的に、横山光輝氏はこの膨大な作品を
非常にコンパクトに、かつ軽妙にまとめ上げています
いわば大河小説を「ダイジェスト版」と言ってもいいくらいに、短くまとめているのですが
それが逆に作品全体のテンポの良さとなり、非常に読みやすい構成となっています
物語は、蹴鞠(けまり)が得意というだけで、時の皇帝から気に入られたコウキュウという男が
軍の最高責任者に着くというところから始まります
しかし軍の武術師範・王進は、コウキュウが昔自分にケンカをふっかけてきた
ゴロツキのヤクザだったことに気がつきます
なぜ・・? なぜあんな男が軍の最高司令官に・・?
王進は政治の腐敗にガクゼンとし、コウキュウ'の過去を知っている自分は必ず殺される
ということを覚り、逃亡を始めます・・・
次のエピソードでは、林沖という棒術の名人が出てきます
林沖の奥さんは美しい女性で、コウキュウの弟から惚れられてしまいます
林沖の奥さんを手に入れようと、コウキュウは林沖に無実の罪をかけ、流罪にし
更に命を狙います
また次のエピソードでは、晁蓋(ちょうがい)という大地主が活躍します
晁蓋は、民を苦しめ税金を搾り取る役人に憤慨し、その財産を強奪しようと企てます
そのことが役人にばれてしまい、窮地に陥りますが、宋江という義憤に厚い役人から助けられます
しかし、その宋江も晁蓋を助けたことがばれて、流罪にされてしまいます
この様に、義に厚く民に優しいために犯罪者になった者や、権力者によっていわれのない罪に
おとされた者たちが、続々と梁山泊という砦に集まり、国の将来を憂い、民を救っていこうというお話です
物語はその後、梁山泊を倒して名を上げようという祝家荘なる強敵との戦い
高唐州の知事で妖術使い・高廉との戦い
軍神と恐れられた呼延灼(こえんしゃく)将軍との戦い
等々が、わくわくする展開で進んでいき、全く読み飽きることがありません
とにかくストーリーの構成がテンポよく、それでいてひとつひとつの
短いエピソードの中に、登場人物一人一人の個性も非常に魅力的に描かれています
(敵・味方共に魅力のあるキャラクター達で、戦う中で、梁山泊の理念に共鳴し仲間に
入る人物も多く出てきます)
横山氏は、忍者漫画でも多数のキャラクターを描いた作品がありますが、この水滸伝でも
わずかなページ数の中で驚くほど多くのキャラを描いています その手腕は見事というほかありません
人情に厚くみなから慕われる 宋江
弓の名人 花栄
怪力で短期だが正義感の強い鉄牛に魯智深
棒術使いの名人 林沖
林沖と互角の勝負を演じた 青面獣楊志
女剣士 一丈青雇三娘
戦略の名人 呼延灼将軍
1日に8百里(300キロ)を走る「神行法」の持ち主 戴宗
潜水・水泳の達人 張順
虎狩りの名人 解珍・解宝兄弟
阮3兄弟 軍師 呉用 等々
数え上げればきりがない。
(原作では108人の英雄という設定ですが、この漫画では3分の2位しか描かれてません
あくまでもダイジェスト版的に描いてますので
その辺は原作を読んでる人には物足りないかもしれません
私は原作を知らずに読んだので、充分楽しめましたが)
最後は、この英雄達が、時の皇帝に認められて、国の為に戦うという大団円となっていて、
悲劇の三国志と違い、読んだ後も爽やかな気分になります
(かなり悲惨な部分もありますが、横山氏は悲劇の部分は抑えて描いてます)
私は原作こそ中国の伝記になりますが、これだけテンポよく小気味良くまとまっている
この水滸伝こそ、横山光輝氏の最高傑作ではないかと思うくらいです
読み始めたらおそらく全巻あっという間に読んでしまうと思います