ついに全19巻が完結。
早く終わりを読みたいような、いつまでも読み続けていたいような複雑な心境でこの巻を開いた。
もはや、中国古典の一大絵巻「水滸伝」とはまったく別のストーリーになってしまっている。
「おいおい、南方の宗教反乱はどうなった?」なんて野暮な疑問はこの際どうでも良いのではないか。
原典の人物設定を下敷きに非科学的な要素を極力排除し、なおかつ激しく胸を打つ物語に再構築された。
一般的には、反乱の経済的基盤がどうの、兵站の確保がどうのといった論理的な裏話が多くなれば、言い訳や説明めいて物語の高揚感は低くなってしまうはずなのだが。
北方先生の筆力に敬服する。
イデオロギーという言葉でも宗教という言葉でも適切に言い表せない「替天行道」の志。
やはり志という言葉が一番適切だろう。
宋の統治に対する漠然とした不満に言葉を与え、よりどころを築いた「革命第一世代」の男たちの戦いはこの巻で完結する。
それも見事に、清々しいまでに完結する。
この巻に至るまでに戦死したものは数知れず、この巻でも壮絶に戦って戦死するもの、梁山湖で溺死するもの、砲の破裂に巻き込まれ爆死するもの、自ら死を決意し受け入れるもの。
志を共に抱いた友を見送り、生きることを選ぶもの。
命を賭しながらなによりも暗い闇を抱えたまま生きることを「選ばされた」もの。
戦いの幕を開けた男たちの役割は終わり幕が引かれた。
それでも志は消えてなくなるわけではない。
正規軍は勝たなければ負けだが、ゲリラ兵は負けなければ勝ちであり、「替天行道」の志を抱いて戦えるものがいる限り「完全な負け」はありえない。
志の種を心に植えられた「革命第二世代」の物語が、「楊令伝」なのであろう。
読みたくて読みたくて仕方なかった。
ようやく読める。
まもなくGWなので、「水滸伝」1-19巻と「楊令伝」1-5巻を読破しようと思っている。