水滸伝は、北宋の末期における粱山泊盗賊集団の形成、発展、消滅の物語です。少年文庫版は百二十回本を六十四節に分けた抄訳ですが、本巻は、武松の潘金蓮、西門慶殺し(二十三節)から女傑扈三娘が女好きの王矮虎を生け捕りにする話(四十二節)までをおさめています。重要事件は詳しく訳されているので水滸伝を楽しむにはこれで十分でしょう。訳語については若干異議もあるが、非常に読みやすい良訳です。
粱山泊盗賊団の首領宋江は、小役人上がりのこすっからい小男で、行者武松の腕力も智多星呉用の知謀もない。盗賊団を統率する力量などありそうもないのに、どんな強いヤツでも、宋江の名前を聞くと恐れ入って平伏する。つまり義士として名声が天下にとどろいている。あの無鉄砲きわまりない黒旋風李逵でさえ、宋江には頭があがらない。宋江は、この上なく無能ですが、無能を自覚し、威張らないところが仲間に評価されるのでしょうか。
水滸伝を読むと、中国社会の特色が見えてきます。第一が序列の重視。百八人の豪傑は席次がきちんと決まっています。次に、付け届けの慣習。牢屋にぶち込まれたときなど、獄卒ほか関係者にカネを握らせないと、ひどい目にあう。第三は食人肉の習俗。宿の亭主が旅人を殺して人肉饅頭をつくる。生胆えぐりとって酒の肴にしてやるとか、人肉を食って平気なんて信じられないが、そう言えば三国志演義にも妻の肉を劉備に供した猟師の話がありました。