「水滸伝」と言えば、梁山泊を拠点として108人の豪傑が暴れまわるというピカレスク、若しくはアウトロー系のお話。誰もが名前を聞いたことのある有名な中国古典文芸ですが、「西遊記」や「三国演義」などに比べると、我が国ではいま一つマイナーな観があるようです。
さて、本書は、東洋史京都学派の泰斗たる宮崎市定教授が、この水滸伝を題材に、宋代中国の政治と社会を一般向けに平易に解説するものです。
当時の皇帝徽宗の即位に至る事情と治世の混乱、天下の悪役・童貫に見る宦官の跳梁振り、典型的奸臣・蔡京の実像と当時の官僚制度、宋江や林冲らに代表される地方吏員や下級軍人の実態、さらには当時の監獄制度や道教の流行振りに至るまで、話題は縦横に亘り、当時の中国社会の息吹が伝わってくる心持ちを覚えます。
中国「近世」初期の実情を知るための真に相応しい入門の書であり、また、水滸伝そのものに対する興味を激しくそそらされる本です。中国史に対して興味があれば、水滸伝そのものへの関心があろうとなかろうと、楽しく読める一冊だと思います。