「水滴」「風音」は沖縄戦のその後を扱った作品。作者は今年書き下ろした「沖縄戦後ゼロ年」で「カルチュラル・スタディーズや癒しの島ブームなどでこの作品が一時的に持て囃される」風潮を快しとしない旨語っているので、「いい作品だった」「全日本人必読」などといったいい加減な批評は慎みたいと思う。これらの作品はもちろんあくまで文学であり、小説であることは承知の上で、やはり作者の訴えは「沖縄について、戦争の実態も含めて多くの人に知ってもらいたい、観光でイイトコドリだけしないで欲しい」ということなのではないかと考える。
星一つ減らしたのは併録の「オキナワン・ブック・レビュー」のためである。この強烈に皮肉の利いた仮想レビューの内容を理解してニンマリするためには沖縄についてかなりの予備知識が必要であって、すくなくとも小熊英二「<日本人>の境界」「民主と愛国」くらいは読んでいないと内容が理解できないと思われる。内容は決して悪くないのだが、あまりに「水滴」「風音」と内容が違い過ぎるため、同じ文庫に収めたのは失敗だったのではないか。作者の希望だったのかもしれないが、ちょっと頂けないと思われる。