「上野動物園海水水族館」「葛西臨海公園水族園」「アクアマリンふくしま」という、いずれも我が国の水族館史に一時代を画した3つの水族館の開設に、実際に携わって来た著者が、自身の回想も含めて、文字通り「水族館の作り方」を記した本。水族館のコンセプト・テーマの立て方から、そのコンセプト・テーマを実際の水族館の具体的な設備や展示に落とし込んでいく方法論などは、巷に溢れている凡百の「水族館ガイドブック」などでは、まずお目にかかれないもので、極めて興味深い。
ただ記述内容はどちらかというと、建築・展示・設備など、ハード寄りの話が多くて、社会教育機関としての水族館「活動」などのソフト面に関しては、やや物足りない印象も受ける。「アクアマリンふくしま」で取り組まれているシーラカンスの域内保全プロジェクトの紹介などはあるが、逆に地元・福島での地域住民や学校に向けての活動や、新施設である「アクアマリンえっぐ」における生命教育の内容などにも、もう少し詳しい説明があれば良かったのに…。と思う。
(もちろん、限られた紙幅の中でのバランスを考えて、「つくる」という本書のテーマに即した施設/ハードの記述を中心としたのかもしれないが…。)
いずれにせよ、日本が本当に「世界一の水族館大国」だと胸を張るためには、水族館人の側の一方的な努力だけでなく、むしろそこを訪れる来場者・来館者である我々、一般市民がまた、「世界一の水族館見学者」になり、世界一の水族館の「見巧者(みごうしゃ)」になりたいものだ。そのためには、本書のように、社会教育機関としての水族館の使命を十分に認識した上で、単に珍奇な海の生き物を集めただけの見世物小屋(メナジェリー)を超えた、「水族館のあるべき姿」を考えさせられる本を読むことは、大変に有意義なことだと思う。
「ここが見所だ!」とか「こんな風に楽しもう!」というような、単なる施設紹介のガイドブックにはもう飽きた。本書を読んだ後に水族館に行けば、展示の手法はもちろん、通路も、建物のデザインなども、それまでとはまた一つ違った見方で楽しむことが出来るようになるだろう。水族館や動物園に勤務する水族館人・動物園人にはもちろん、私のような水族館好きなだけの一般人にも幅広く、読まれて欲しいと思う本である。
最後に、本書の内容とは直接関係しないが、2011/03/11からの「東日本大震災」で大きな被害を受けた「アクアマリンふくしま」に、衷心からのお見舞いを申し上げると共に、その再開が地元復興のシンボルとなり、さらには、これからの新時代における我が国の水族館の、更なる発展の始まりを告げるものとなる事を、心よりお祈り申し上げる。
期待しています。頑張って下さい。