追う男、追われる女…。
帯にそう記してあった。
追う男、遠野。追われる女、風子。
物語は、アパートの一室で顔を潰された男の死体。
現場にはエンドレスでシャンソンがかかっている。
そして、その部屋に住んでいた夫婦の失踪。
一見、単純な殺人事件に見えたが、事実を追う都度「謎」が深まっていく過程が
とても旨く進む。
数十年の時間を、何度も移行して 現在と過去が交差して
風子の過去が暴かれて行く様は、見事。
そして、刑事遠野の思考も現在と過去を行きつ戻りつ。
だからこそ、遠野の突飛な行動に繋がるのであろう。
共感までは出来ないけれど、人にはその時々の感情に動かされてしまう瞬間がある。
柴田さんの作品は、人の「業」を表すのが旨い。
人を「好き」だという感情が、幸せにもなれ、不幸にもなる。
人に翻弄され続けてきた風子が、最後に語った言葉が心に染みる。
物語は、多少なりとも強引な所があるが 目つぶれる程
ストーリーに入り込むことが出来た。
全体的に暗いイメージで進行するので、そういうのが好きじゃない方は
やめた方がいいかもしれない。
それでも、単なるミステリーとしてではなく
いろいろな意味で、心に染みる本であると思う。
蓋を開けてみると、事件自体は そう複雑怪奇なものではなかったが
それでも、あぁ、そうだったんだ…と唸った。
最後に「因果報応」という言葉が、頭にちらついた。