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水の透視画法
 
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水の透視画法 [単行本]

辺見 庸
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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水の透視画法 + 瓦礫の中から言葉を―わたしの<死者>へ (NHK出版新書 363)
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商品の説明

内容紹介

ノンフィクションの世界に新たな境地を切り開いた伝説的名作「もの食う人びと」から17年―
作家・辺見庸が、病魔と闘いながら、個のかぎりない自由のあかしとして書き綴った、未来への
予感がひそむ珠玉の作品群。日常の何気ない風景の中にかすかな兆しを感じとり、静謐で色彩感
溢れる文章で現代社会と人間の根源的問題を省察する。心にさしこむ言葉の数々は著者の世界観、
思考の全貌をうかがわせる。

内容(「BOOK」データベースより)

日常に兆すかすかな気配を感じて、作家は歩き、かんがえつづける。突然の大地震と大津波、眼にしたことがないそら恐ろしい光景。それは結末ではなく、新たなはじまりなのか。ことばから見はなされた現代世界を根源から省察する珠玉の作品群。

登録情報

  • 単行本: 336ページ
  • 出版社: 共同通信社 (2011/6/15)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4764106329
  • ISBN-13: 978-4764106321
  • 発売日: 2011/6/15
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.8 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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17 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By adanama
2008年3月から2011年3月にかけて、共同通信から全国の新聞社に不定期に配信されたエッセイをまとめたもの。全部で70数篇。

喫茶店で耳にした学生の会話、友人からの国際電話、死刑についての報道・・・。
著者の半径何メートルかの事象から「世界の涙の総量」(『ゴドーを待ちながら』)や絞首刑や伊藤律まで、
地を這うような著者の視線が日常に潜む時代の''孔”を見つめる。辺見庸の視線は鳥瞰ではなく虫瞰だと言った人があった。
著者の言葉の底に流れる「怒り」=「ある空気」を醸成するジャーナリズム、なされるがままの世間、そして自分自身への怒り
ーーは、これまでになく静かで、そして強い。全身を締め付けてくる真綿のようである。

いわゆるマスメディアの言葉とは対比的に、わかりやすい言葉では語られず、また安易な結論を与えてはくれない。
そのせいで、一篇一篇はどこか詩、あるいは丁寧に編まれた「呪詛」のように見える。
誰にとっても「消化し難い一冊」。本書自体が思考せよ、という強いメッセージになっているようにも見えた。

その日暮らしの生活を送る元教え子とのやりとりを描いた「プレカリアートの憂鬱」は、奇しくも、秋葉原事件を報じた紙面上に掲載された。
「いま、何に怒ればいいのですか」という青年の言葉が心に突き刺さる。
以下2011年3月、震災後に掲載された最後の一篇の言葉を、一部引用させていただく。

「・・・いまはただ茫然と廃墟に立ち尽くすのみである。だが、やがて涙もかれよう。
あんなにもたくさんの死をのんだ海はうそのように凪ぎ、いっそう青み、ゆったりと静まるであろう。
そうしたら、わたしはもういちどあるきだし、とつおいつかんがえなくてはならない。
いったいわたしたちになにがおきたのか。
この凄絶無尽の破壊が意味するものはなんなのか。まなぶべきものはなにか。
わたしはすでに予感している。非常事態下で正当化されるであろう怪しげなものを。
あぶない集団的エモーションのもりあがり、たとえば全体主義。
個をおしのけ例外をみとめない狭隘な団結・・・(中略)
大地と海は、ときがくれば、平らかになるだろう。安らかな日々はきっとくる。
わたしはそれでも悼みつづけ、廃墟をあゆまねばならない。かんがえなくてはならない。」

/「非情無比にして荘厳なもの」
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15 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
共同通信社を通じて各地方紙に3年間にわたり連載してきた随筆をまとめたもの。
派遣村、秋葉原事件以後の3年間は、詩文とこの連載が、筆者の主な仕事。感想を少し。

かつての抵抗三部作などと比べると筆者は怒らなくなった。
大病を患い、身体の自由がきかなくなったこと、政治、マスコミなどへの批判や、その背景である、世間にかんする考察、言葉
が人を見放す様などをひととおり、指摘したことなどがあるのかもしれない。指摘し、明らかにしたあとも以前より深刻さをま
し続ける社会に持続的に向き合う持久戦の構えかもしれない。
それだけに対象を語る論調は淡々として、沈んだ思索と観察の経過が書かれている。
日常のなかの非日常、特に若者への観察と描写が印象的。

既に地震後の、社会の危ない兆候を指摘する筆者は、自身と読者の内面への指摘を重ねる。
これから非常事態の名のもとに怪しげなものがまかりとおるという。
3.11以後、それらをどのように見て、どのように考えるか、筆者はいつも、自身と読者につきつけている。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
職人の技 2011/8/21
By どぜう トップ1000レビュアー
本書は08年から3年間全国加盟新聞社に配信された本書名の連載企画を書籍化したものらしく、一本4ページ前後の文章が配信日時順にまとめてあります。

文章の中身は、著者の日々の生活上の「些事」を題材に、自身の五感・身体感覚を存分に行き渡らせつつ、人間の生の営み、その悲しみ・喜び、現世およびそこに住まっている我々の「すさみ」などを綴ったものです。

評者が長らく小説などの文学作品と御無沙汰してしまっている所為なのだとは思いますが、著者の綴る文章は簡潔ながら凝ったものが多く、かと言って嫌味に感じられることもなく、久しぶりに文を生業とする人が編んだものを吸い込んだ気がしました。
初耳の植物名も多数あり、それらについてきちんとフォローしたわけではないのですが、それに限らず毎篇文章中に自分のボキャブラリーにない表現を発見するのも楽しかったです。
夢野久作、ヴァルラーム シャラーモフなど新しい出会いも提供してもらいました。

著者の作品を通読したのは本書が初めてなのですが、評者に強く訴えかけた文章は、意外にも(?)社会時評的な内容のものではなく、著者の病苦やそれを免れられない一個の生物としての存在に関わるものでした。それは、大きな病(脳出血とガンを患われいると記されています)を抱えられ「弱者」の側に身を置く著者の声が、「難病」を発症しつつある(?)評者の中で共鳴したからなのかもしれません。

ただ、八合目を過ぎた辺りでやや息切れを覚えたため、★を1つ減点して4つとさせて頂きました。
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