新書の棚の左から無作為に20冊買ったなかの1冊。
で、結論をいうと、あたり!である。
人口の増加、工業発展、途上国の開発などによる
水不足や水質汚染がいわれて久しいが、
本書は、資源量の観点、循環利用の観点、水質基準の観点から
水資源利用の現状を検討し、リスク管理の重要性を説いている。
夏の渇水時期でも農業用水路にはとうとうと水が流れている。
田舎ではよく見られる光景なので別段不思議に思ったこともなかったが、
水道が給水制限をしているのに、なぜ用水路には水があふれているのか。
確かに妙だ。
これは利水権を適切にコントロールできていないことが原因であるという。
水不足の原因は実は絶対量の不足ではなく、利用効率が最適化されていないことによる、
という事実をはじめて知った。
また水質基準の章では、有害物質の基準値の決め方が非常に難しいことも知った。
例えば、水道に含まれるある有害物質の許容量を決めるのに、
発ガン率が10万人に1人、というレベルにするとしよう。
この基準値を実験で測定する為に必要な実験動物はなんと600万匹。
費用も1兆円を超えるという。
従って、現在の基準値は推定値。
誰も直接証明していない。あくまでも仮説なのである。
書名の「水の環境戦略」はなじみのない言葉だが、
単に企業や行政の不備を告発するということではなくて、
上手にリスクをコントロールしながら、
人間の活動と水資源の保護を両立させるための戦略を考えよう、
ということである。
新書の醍醐味は、その道の専門家による一般向けの啓蒙にあると思うが、
その意味で本書は新書の王道をいくものである。
環境問題に関心をお持ちのかただけでなく、
この方面にまったく興味も知識のない方にも、
純粋に知識欲を満足させられる一冊としてお勧めできると思う。