パトリシア・ハイスミスの作品には、殺人を犯す主人公
が多く出てきますが、社会の憎むべき敵として書かれる
のではなくて、野蛮でも凶暴でもないごく普通の人間と
して描かれています。
この作品に出てくる主人公も普段は礼儀正しくて信頼も
厚く、それは殺人を犯しても誰からも疑われないほどで
、犯行を疑う妻は必死で夫の殺人を告発しますが誰も耳
をかしません。普通であれば、この妻の方に読む側は同
情して感情移入しますが、なぜか殺人を犯した主人公の
方に感情移入してしまい、妻に対して苛立ちを感じてし
まうから不思議です。
この主人公と妻の駆け引きがとても面白くて、ラストま
でスラスラと読めました。