こんな人がいたのか、というのが最初の驚きでした。当時の社会の空気というものは、実際に体験したわけではありませんが、言いたいことが言えない、言えば憲兵や特高警察にしょっ引かれるかなりたいへんな世の中だったでしょう。吉田久の判決は気骨どころかまさに命がけのことだったと思います。しかし、命がけながら裁判官として、たんたんと気負い無く、訴訟に対して丁寧に証言と証拠と法律に照らして当該選挙区の選挙の無効を判決したことが分かりました。ごく一部の人は知っていても、一般に知られていない吉田久。司法の独立を守った大津事件の大審院長・児島惟謙のことは、私の高校時代の教科書に載っていたと思いますからある程度知られていますが、それとに勝るとも劣らない、司法の独立を表した意義ある判決だったと思います。それを掘り起こし、その裁判官に迫った良書です。たいへん勉強になりました。著者はNHK記者ですし、そのうち番組「その時、歴史が動いた」に取り上げてくれないかな。