競輪界の往年のスーパースターである中野浩一の自叙伝。天才レーサーの名をほしいままにした「ミスター競輪」は、日本プロスポーツ界初の1億円プレーヤーであり、競輪ビッグタイトルの常連であり、その生涯成績は勝率5割、2着連対率は7割、世界選手権プロスクラッチ競技では前人未踏の10連覇という大記録を打ち立てている。著者の考えるプロフェッショナリズムや私生活、練習、天才論を読めば、一流アスリートは例外なく怜悧かつ繊細であることが見て取れる。本書が書かれたのは、著者がまだ現役選手であり、世界選手権7連覇を成し遂げたばかりの頃である。当時の勢いがそのまま文章になったような本書は読者を晴れ晴れとした気持ちにさせる何かを持っている。それは小澤征爾の「僕の音楽武者修業」や岡本太郎の「青春ピカソ」にも通底する、若さゆえの強さ、ひたむきさ、そして己が決めた道を邁進する潔さではないだろうか。大人になるのに、誰もが通らなければならない青春があるとすれば、何かにひたむきに打ち込むことほど輝かしく、かけがえのないものはない。本書は競輪ファンや自転車競技に興味のある人はもちろんのこと、プロスポーツ選手をめざす人、未来ある若い人達にも是非読んでいただきたい一書である。著者のユーモアセンスもこれまたいい。