この本を読むまで、わたしはPMC(=Private Military Company:民間軍事会社)は傭兵ビジネスなのだと思い込んでいた。どうも『戦争の犬たち』や『ワイルドギース』の印象がつよすぎて、同じようなものだろうと思い込んでいたのだ。思い込みほど怖いものはないと痛感している。実際は、正規軍では対応できない要人警護やロジスティックスなどの業務を請け負うアウトソーシングに近いようだ。とはいっても、活動場所は戦場の最前線だ。半端な業務ではない。
民間軍事会社は、冷戦崩壊後の環境変化によって国際紛争の内容が変質した状況に対応して急速に発展したあたらしいビジネスだ。本書によれば米国と英国、そしてフランスという世界の軍事先進国の退役軍人たちがたちあげたビジネスである。
PMCが一気にブレークしたのは、2003年にはじまったイラク戦争である。ブッシュ政権のもと戦争に突入したアメリカは、戦争の大義があやふやなままの状態であったため、犠牲者数をミニマムにするためには限られた数の兵員で戦うことを余儀なくされた。その結果、正規軍の補助としてPMCを積極的に使用することになったのである。つまり、需要と供給がそこに見られるのであり、21世紀に入ってから急激に成長したビジネスでもある。
どんなビジネスもそうだが、ひとつの産業が誕生してからしばらくは、有象無象(うぞうむぞう)が参入してきて混戦状態となるものだ。しばらくすると、正常化のために企業同士でコミュニケーションがとられるようになり、悪質な業者が淘汰されていく。つまり一つの産業として確立し、認知されていくのだが、PMCもまた同じプロセスをきわめて短期間のうちにたどったことを本書で確認することができる。
発展途上国の安い労働力を利用することで成立しているPMC。先進国と発展途上国のあいだに存在する経済格差、人件費格差が、PMCビジネスを成立させていることも指摘されている。つまり、きわめて資本主義原則に則ったビジネスであるわけだ。
武装しながらも軍人ではないPMC社員はシビリアンである。この法的にはきわめてあいまいな存在が、ときに大きな軋轢を生み出すのであるが、著者によればいまやPMCの存在抜きに国際紛争解決は不可能であることが納得させられる。自衛隊による国際平和維持活動の中心は施設部隊によるインフラ建設が中心だが、このような業務もまた民間の建設業者のほうが効率的といえば効率的だ。そう考えると、日本の国際支援のカタチも将来的には変化していくと考えてもいいのかもしれない。
マスコミ報道されながらも実態のよくわからないPMCについて、読者の蒙を啓いてくれる良質なレポートである。