すばらしい本で感動しました。日本人を芸術鑑賞の面で理解させてくれます。例えば、日本人は奇数美を美しいと感じることや、世界的にみて美を見出すのが上手なこと、などです。
奇数美というのは、能楽や茶道、建築といった日本古来のものに共通してみられ、西洋のように幾何的・対称的な美よりも、崩し変化をつけたものを美しいと感じることです。ヴェルサイユ宮殿は鏡の間を中心として対称的になっている点が美しいとされますが、法隆寺などはわざと一部を非対称にしている点を日本人は美しいととらえることなどは、日本の奇数美の典型だと思います。別のお能の本では序破急(=奇数美)と表現していましたが、こうしたことを柳さんの土俵である器などで述べています。その直観的説明が非常に分かりやすく、特に私は彼が心血を注いで作り上げた日本民藝館という美術館で実物を見た後に読んだのでイメージが湧き、その論理ではない直観的な表現により感銘を受けました。完璧なものを作ろうとして作った器にできた微妙かつ自然な歪み・むら等に美が宿るというのです。
また、日本人が美を見出すのに得意であると書いてある点にも感動しました。日本人はえてして自国の文化を他国の文化、特に西洋文化よりも低位のものと考える人が多いのですが、そうした日本人に警鐘を鳴らしてくれます。かつての茶人が、現地では全く評価されない無名の朝鮮の職人が作った器に最高の美を見出したりしてきた事実は、日本人に自信を与えてくれます。バーナード・リーチは、日本ではいい骨董品を見つけたらすぐに買わないと無くなってしまうと述べ、その美を鑑賞する眼に感嘆したそうです。