3版になって内容がかなり難しくなっていると思う。受験レベルでは通読すらも難しいかもしれないですよ。
★ 私の受験時代はこの初版。記述に素朴さがあった。
3版は新しい判例の重要なものを特に深く追及する書き方になっているうえに、現実の取引類型がかなり複雑なものまで挙げてある。
国際取引への配慮もあり、さすがだと思わせるものです。この著者のもっている情報は最新のものですし、十分に国際的な動向を
考慮してあります。
ただし我々のころから賃貸借がわかりにくいといわれていた。これは借地借家法の全体像を説明しているまとまった記述がないためです。
また請負のところもやや実務的な紛争類型からはずれています。こういうところは、主な判例を検討したノートを作っておく以外ないです。
部分的には内田民法よりも優れている著作もありますが、トータルで考えればこちらのほうになるでしょうね。
また民法改正についても配慮があるので、法律専門家であれば、必ず参照すべき一冊だといえます。
★ しかし、最高の水準書としては、来栖三郎「契約法」(有斐閣)があります。あとは三宅「契約法」(青林)。
しかしこの2著は、プロ級のレベルに到達したあとの思索本です。図書館で必要なところを読むといいでしょう。
さらには我妻栄「民法講義」の債権各論(不法行為以外はすぐ手に入る)があります。これは裁判官の必携書になっています。
本書を受験のために使うとすれば、注意点てんこ盛り。
1 基礎的な論理操作というか条文操作がかなり省略した書き方になっているのでそこは講義などで補ってもらう必要あり。
自学だけでも理解可能だと思うのですが、本書と六法とにらめっこの真剣で集中的な読書を図書館などでする必要ありでしょう。
2 厚い。したがって試験に出るところと出ないところ(出そうと思っても出せないところ)を見極める作業が必要。
過去問を検討する段階で読みなおしをしてみるとわかります。
3 判例をしっかり押さえる作業を優先すること。内田説はその理解のために摂取することを常に意識すること。
学説優位ではぜったいに合格しないです。
要件事実も本書は不十分。要件事実マニュアルを手元に置いて比較しながら読むといいでしょう。
現下の問題は、本書以外に適切な債権各論の入門〜専門レベルの本がないことです。大部のものもありますがあまりに大部で大変。そのギャップが
ひどすぎる。
平井著は理論的に高度ですが、平凡な頭脳をもつ受験生(私を含めて99%が該当)には向かないでしょう。
平井著は、読者にもう一度組み換えの作業を強いるので、回りに議論する相手がいない(というかだれも議論しない環境)でひたすら勉強だけの孤独な受験生(かつての私がそうだったしいまも大部分の受験生はそうでしょう)にはきつい。やはり自己完結的な解決を提示しているもののほうがよいです。
★ いま法務省や最高裁などにいる秀才の同級生を考えても、彼らは有斐閣双書などで平凡に勉強していたと思う。
司法試験は才能ではなく努力です。合格後に才能を発揮してください。それまでは我慢。
★ 有斐閣が新しく始めているシリーズがいいかも。潮見はお勧めしない。潮見は一種のダジャレ本。
★ 債権総論は中田裕康がいいとおもう。もっとも先鋭的で現職裁判官の支持がもっとも厚いものです。執行法への配慮もあり。
★ 伊藤マコト先生やレックなどの予備校本は不必要なところもやたら詳しい。ゆえに辞書(事典)のかわりに持つといいです。
予備校本はお互いに競争しているので親切。だが体系的な視点に欠けるし、先端の議論は怖がってしていません。
ときどき見るといい。
4 短期合格のためにはノートを作るべき(要約を自分なりにまとめたノート(メモ書き)でいい)。
あるいは通読するときに必要でないところはマーカーで色分けをしたりして、次に読まない工夫をするとよいです。
5 受験時代は時間がない。一冊精読主義が正しいです。慎重に選び選んだあとは迷わないこと。
★ 付言すると、実務家になるための勉強をするときは、過度の抽象論には踏み込まないのが賢明。
たとえば請求権の本質については長い議論があって、ドイツの議論そのものを持ってきて本質論としていた。
しかしそういうのはあっさりスルーしたほうが賢いです。「本質」論は避けましょう。
最初に条文操作を学ぶには、自分がよく知っている条文を要件事実に分解することを繰り返してみるといいでしょう。
たとえば、93条94条95条や代理(表見代理無権代理)の要件事実を書き出してみる。そしてそれがなぜかを考える。
具体的な事案の事実関係のどこがどの要件になるかを考える。
裁判では条文をどうやって分解しているかを考える。なぜ自分の考えるように分解しないのかを考える。
そういう視点から自分の基本としているテキストを読み返えして、そこに引用されている判例をいくつか実際に読んでみるといいでしょう。
短いものがいい。
とくに下級審の判例は、適用する条文はこれ(とこれ)、それに必要な要件はこれとこれ、当てはめる事実はこれとこれ、
そのための証拠はこれとこれ、というふうに判決のなかではっきりと書いてあります。
我々弁護士は、この判決文をもらってうなりながら考えて控訴するかどうかを決めたりするわけなので、判例の文章はとても大事ですよ。
この一連の作業を「条文操作」と呼んでいるわけです。
いくつか読めばコツがわかります。
司法試験の答案は地裁の判決文を再現する作業と同じです。ミニ判決の練習だといってもいいでしょう。研修所でもできのいい起案は
採用してくれますよ。
急がば回れ。その時点でできる範囲でいい。勉強は円環状に上昇します。一直線ではないです。
がんばりましょう。