まず形式面について。
5版補正版と比して紙質が薄くなり書き込み等はしづらくなっている。
財産法全体をまとめて持ち運びやすくなったのは利点だが、好みの分かれるところだろう。
入れ替えのあった件数は42に及ぶため、5版補正版の読者も捨てずにとっておくのがよい。
次に内容面について。
ロースクール時代の到来でケースブックの類はかなり出ているが
やはり判例百選シリーズは解説を含めて読み込んでおくことが
法解釈学の運用上、共有財産であり礼儀であるといっていい。
民法に関しては解説担当者も概ね当該分野に業績のある方が
選定されており、判例の射程や位置づけを理解するのに適切な分析が提示
されている。部分的にやや趣味的な学説史に傾倒したものもあるが
全体としては通読に値するだけの、高度かつ安定した仕上がりとなっている。
法解釈学を学ぶ素材が多様化した今では「百選は読む必要はない」という考えの人も多い。
しかし百選登載判例事案を自分の頭で整理し、考え、知識として押さえる準則は
きっちりと暗記する。併せて条文を読み込み、どの文言がどのような事案で問題となったか
を繰り返し想起する。鋭い解説の分析は自分の思考にとりこんでしまい血肉化する。
こういった訓練は「お勉強」用の教材が溢れる時代にあって、
時間もかかり、古く、流行らないかもしれないが、通過儀礼としてやはり必要であるようにおもう。