Sシリーズは玉石混交である。著者の資質、バランス感覚においても差が大きい。法律家を志す者が最初に読むべきテキストは、その者の一生を左右する。偏りのある学者のテキストを最初に読むことは有害無益である。残念なことに、Sシリーズには、そのようなテキストがなくはない。浦川道太郎教授の書かれた本書は、バランスのとれた、いわゆる独自の学説を初学者に押し付けるのではない、専門知識の十分ではない、まだ未熟な学生の視点に立った、通説を記述したテキストである。かつてわが国には、コンパクトなテキストとしては、雄斐閣双書しかなく、それは文章も悪文、バランスに欠け、共著者それぞれが自説を読者に押し付けるものであった。本格的な基本書としては、我妻栄の民法講義の大著しかなかった。Sシリーズは、双書の反省の上にたつ、読者のための入門書である。読みやすく、偏りもなく、初学者がまづ頭に叩き込むべき知識が、客観的に記述されている内容となっている。