アメリカというのは、日本人にとって最も近しい外国であるにもかかわらず、その政治のありようは、ひどくわかりにくい。例えば、そもそもなんで「銃規制」がそんなに問題なのか?なんでそんなに「武装の自由」にこだわるのか、というのは日本人としてはどうしても腑に落ちない。アメリカ政治は、本当にわかりにくい。
実は、銃規制などの「社会的価値観」がアメリカ人の「生き方」、個人のアイデンティティに深く関わってしまっていることが問題の根本なのだ、ということが本書を読むとわかる。他の国なら「どうでもいい」ような問題が、このあまりにも巨大で非常に多様な国では、国民一人ひとりの自己イメージ形成に深くかかわっているのだ。「なんて面倒な」と思わずにはいられないが、その「面倒さ」があの国の活力の元となっているところもある。なんとも複雑である。
本書のかなりの部分で「民主党的価値観」「共和党的価値観」を解説するためにハリウッド映画が用いてあるが、一種すぐれた映画評論にもなっている。こういう視点での映画評論は新鮮だったので面白く読んだ。説得的でもあったが、映画のような草の根の文化にまで政治的価値観が投影しているアメリカって・・とも感じた。「政治」が過剰なのである。
なお、両党の対立軸の変遷を解説した第4章はアメリカの歴史を理解するには非常に役に立つ。民主党=リベラル、共和党=保守と思いこんでいると、奴隷を解放したリンカーンは共和党の大統領だった、と聞いて混乱してしまうので。(私がそうでした。)
アメリカの「分かりにくい」部分を理解するために非常に役に立つ一冊です。