アメリカのヒューストンバレエ団で、16年間にわたってプリンシバル・ダンサーを務めた
リー・ツンシンの自伝『毛沢東のバレエダンサー』(原題Mao's Last Dancer)を読みました。
2009年に、『ドライビング Miss デイジー』のブルース・ベレスフォード監督によって映画化され、
日本でも、昨年『小さな村の小さなダンサー』という邦題で公開されました。
本作は、文化大革命で混乱する中国の貧しい農家に生まれたツンシンが、両親からの愛情と
兄弟との絆を支えに、飢えに耐えながら懸命に生きる少年時代を描いた『子供時代』、
毛沢東夫人の江青が名誉校長を務める『北京舞踏学院』の生徒として、10億分の1の確立で選ばれた
ツンシンが、親元を離れて、厳しいバレエのレッスンに耐えながら成長していく姿を描いた『北京』、
そして、ヒューストンバレエアカデミーで開かれるサマースクールに招待される2名のひとりに
学院から選ばれて渡米したツンシンが、アメリカの自由な社会を経験して、共産主義に対する信念が
揺らぎ始めて、亡命を決意するまでを描いた『西側世界』の3部構成となっていています。
『子供時代』『北京』を通して描かれた家族愛が、筆者が一番書きたかったテーマになっている小説で、
全体の85パーセントを占めていますが、映画は、西側の映画人によって作られただけあって、
渡米してからのツンシンのカルチャーショックを描いた『西側世界』をメインにした、
偏見に満ちた作品に仕上がっていることが分かります。
ヒューストンバレエ団の舞台監督ベンが、父が骨身を削って稼ぐ給料の65年分相当にあたる、
5千ドル分のクリスマスプレゼントを数時間で買う姿を見たツンシンの愕然とする姿が、
小説では描写されていますが、映画は、資本主義の堕落した一面をオブラードに包んでしまって、
自由ばかりを強調しているのが鼻に突きました。
本作は、やはり中国人の名匠チャン・イーモウやアン・リーに映画化してもらいたかった。